【劇団代表・時津真人より】
またもやこんな発表をしなければいけないことになってしまいました。コロナ禍での公演を企画することは、リスクとは常に隣合わせではあるのですが、何度経験しても慣れることなく、ただただ悔しい思いです。
こんな素敵なニュースもありました。
「25日に4都府県に出される緊急事態宣言を受けて、東京都内に四つある寄席は、客数を定員の半数以下に減らして通常通り興行をすることを明らかにした。都から無観客での開催を要請されたが、例外規定である「社会生活の維持に必要なもの」に該当すると判断したという。」(朝日新聞デジタルより)
後に続きたい気持ちはやまやまなのですが、万が一のことがあった場合に、ここぞとばかりに演劇界に吹くであろう逆風を想像すると、この度の顔見世公演は「無観客生配信」に切り替えるという判断をせざるを得ませんでした。
東京都独自のイベントの開催制限、のニュースを目にした時は固まりました。胸が張り裂けそうな思いでした。稽古を重ねてきた劇団員たちに対して自分は今、何ができるのだろう。可能性はないのだろうか。
僕自身、演劇はお客様が入って初めてピースが完成するものだと思っていますので「配信が代替となりうる」なんて意見を都のトップの方がおっしゃっていた時は耳を疑いました。もちろん遠方でも見れる、気軽に楽しめる、というメリットがあることは承知の上ですが、やはり生の観劇に敵うはずはないという考えです。
しかしながら一年ほど前の緊急事態宣言の時、我々には為す術がありませんでした。ひたすらに無力さを痛感させられるだけ…
それを受け、
★劇団で配信機材を揃え、自前の機材・スタッフだけで配信ができるシステムを作ったのが昨年の秋。⇒今回、中止や延期以外には、これしか選択肢がない。。。
☆コロナが収まっても、何かあった時にいつでも上演できるコンテンツを持っておきたくて挑戦した、ひとり芝居『ヒモのはなし』を公演したのがつい先月と今月。⇒今回、このタイミングでやらなきゃ意味ないでしょ、俺。。。
★+☆=★☆北区AKT STAGE。ただ有観客公演を無観客生配信に切り替えるだけでなく、もう一手足したい。飲食店で、頼んでないのに出してもらったデザートのような。グリコのおまけみたいな要素を追加したかった!
そこで『ヒモのはなし』。
この配信公演、無料でやります!!チケットをご予約頂いた方にはもちろん、今後SNSやHPからお申込み頂いた方にも無料で視聴URLをお送りします!!
またもや、とち狂ったと思われるかもしれませんが、理由のひとつは会場である稽古場の通信環境はWi-Fiしかないため、高画質・高音質での配信が難しいということ。そもそも配信を全く念頭に置かずに作ってきたものであること。1,500円のチケット代に対して配信チケットの価格設定ってどうするよ、という自分の疑問符が解消できなかったこと、など理由を挙げればキリはありません。
その代わりと言っちゃあなんですが、次に劇団として有観客で公演できる時は是非とも劇場に足を運んでください。その際「お気持ちBOX(仮名)」をご用意させて頂きますので、そちらに「お気持ち」を頂けたらと思います。想像に難くないとは思いますが、この生配信公演は収入はゼロです。裏方の仕事も基本的には劇団員で賄っている我が劇団なので、支出は世の公演に比べると圧倒的に少ないです。でもその代わり今回はキャスト・スタッフ一同、平等にノーギャラです。皆様のお気持ちで、そこに充当できれば幸いです。※強制では全くありません。
でも、申し訳ございませんでした、と謝るつもりは毛頭ないのです。だってキャスト・スタッフ、劇団の隅から隅まで見渡しても誰も悪くないんですもの。悪いのはコロナ。いや、愚策な・・・やめておきます。簡単に生配信ならOKなんて言ってることに憤りは・・・感じていませんよ。お客様の健康や命に代わるものはありませんから。一刻も早く収束してくれるのなら、どんな協力だって惜しみません。でも演劇界が、演劇人がこのコロナ禍でどれだけ心を砕きながら一年を過ごしたことか。
今回の決断は本意ではありません。必ず今回のキャストで、お客様の前で公演する機会を作ります。でも無観客であったとしても、本番をやらせてあげたいという気持ちが上回りました。
何年後になるのか分かりませんが、今の状況を笑顔で懐かしめるようになるためにも、この荒波を何としてでも乗り越えて進んでいくしかありません。同じ船に同乗してくれている劇団員たちが、同じ方向を向いていてくれている以上、不可能なことはないと信じております。
「無料だけど、申し込んだら次行かなきゃいけないのか?」そんなことはありません。次は生で観劇したいと思わせることができなかったこちらの責任です。是非、多くの方に情報を拡散して頂き(URLは拡散しないでください。各人でのお申込みをお願いします)たくさんの方にご視聴頂けたら本望です。
これを書いている今も、中止・延期を余儀なくされた演劇人たちの叫びや怒りや無念、お客様の前で公演できなくなった今回の座組の思い、観劇を楽しみにしてくださっていた方々の思いを考えると、筆舌に尽くしがたい思いでいっぱいです。でもどんな困難な状況でも、僕らにとって演劇は仕事であり、稽古場や劇場は仕事場であることに変わりはありません。演劇界だけが特別ではありません。他の文化芸術分野も、いかなる業種・業態も困難にさらされております。
こんな時世に役に立てないなんて、何のための演劇だよ。
自宅で配信を見てくださるということが、感染拡大防止にほんの少しでも役立ちますように。ほんの少しでも自宅時間を彩りのあるものにしてくれますように。そうあって欲しいと願い、そう信じて僕らはカメラの前に立ちます。
2021年4月25日 ★☆北区AKT STAGE代表 時津真人